ASSET DIRECTION®事例紹介

販売会社のニーズから生まれた最先端ツール

01資産全体のリスク・リターンを可視化できるツールへのニーズ

投信窓販がスタートして15年以上が経過したが、いまだ保有ファンドは1、2本程度、資産もかなり偏った顧客が少なくないという声をしばしば耳にする。「当グループにしても同様で、その背景にはお客さまがトータルでどれくらいのリスクを取られているのか、説明しきれていなかったことがあるのかもしれません」と話すのは、ふくおかフィナンシャルグループ(FFG)の営業企画部資産運用企画グループの平川昌路氏だ。

確かに、多くの販売会社でラインアップ数が急速に増え、商品自体の仕組みも複雑になっているだけに、リスクを投資対象資産や通貨などから細かく分析するのは困難だ。そのためFFGでは、「お客さまにポートフォリオ全体のリスク・リターンを目で見てご理解いただけるようなツールを探していた」(平川氏)といい、そこで導入されたのが三菱アセット・ブレインズ(MAB)によって開発された預かり資産営業支援ツール「ASSET DIRECTION®」である。

タブレット利用イメージ

同ツールは銀行などのCRMシステムと連動し、顧客情報と投信評価機関であるMABが蓄積した分析データとを突き合わせることで、お客さまの資産を投信はもちろん、預金、保険なども含めて総合的に診断。シミュレーション機能なども併せ持ち、すでに大手銀行や複数の地方銀行などで広く活用されてきた。しかも、導入行はこれからさらに増加する予定だという。

02販売現場の使い勝手にこだわり 既存ツールを徹底カスタマイズ

FFGでは、2014年4月のCRMシステムの更改と合わせて、同ツールの採用を決断。併せて、2000台近いタブレット(スレートPCとローカウンター用のダブルディスプレイ端末)の導入も決まっていて、その端末上での使用が前提となっていた。

とはいえ、今回のケースは単に「ASSET DIRECTION®」を導入したというよりも、FFGとMABとが共同で新たなツールを開発したのに近く、FFGでは同ツールを「F-navi」と呼ぶ。そのカスタマイズにあたって重要な役割を担った1人が、福岡銀行の営業推進部教育支援グループの渡辺香織氏である。

インタビュー風景

渡辺氏は福岡銀行の預かり資産販売の専担者、ファイナンシャル・コンサルタント(FC)の指導役を務める。渡辺氏自身も営業店ではトップクラスの販売実績をあげていた経歴を持ち、現場のニーズはまさに身を持って知っているわけだが、「これまではお客さまのフォローといっても、個々の商品の損益状況に関する資料や運用会社の月次レポートなどしかお渡しできるものがなかったため、ツールの必要性は切実に感じていた」という。

だからこそ、渡辺氏が求めていたのは、「とにかくお客さま目線で分かりやすいもの」。結果として、「F-naviはASSET DIRECTION®とはまったく別のパッケージになったとさえいえるかもしれません」と話すのは、MABの執行役員である内田一博氏だ。「例えば、基本パッケージのリスク・リターンマップの描画は理論値である期待リターンを使用していますが、F-naviの開発にあたっては、実績値のリターンを使ったほうが説明しやすいということで、仕様をがらりと変えました」。

これによって月次レポートなどを併用した説明もスムーズになり、使い勝手は格段に向上した。その他にも用語集を加えたり、マーケット情報などをFFGのホームページコンテンツとリンクさせて充実させたりと、すべてをタブレット上で完結させる工夫も凝らしたという。「ちょっと時間が空いたときに、経験の浅い販売員がこれを見ながら勉強するためのツールという意味合いも持たせたかったのです」(渡辺氏)。

02追加した銘柄選択機能の活用ですでに成功事例が生まれている

加えて、目玉になったのは銘柄選択機能を持たせたこと。従来のシミュレーション機能は、投信などの追加購入によって全体のリスク・リターンがどう変化するのか示すものだったが、具体的な商品は販売員がお客さまのニーズに応じて選択していた。F-naviはそこから一歩踏み込み、お客さまの資産状況に即して最も適した商品群を、ラインアップの中から自動的に抽出できるようにした。

しかも、その切り口は「効率化」「分散」「リターン重視」などいくつかあり、それらをタッチするだけで切り口に応じた商品の一覧が表示される仕組み。抽出される商品群は客観的なデータに基づくものだから、当然、売れ筋も個々の販売員の好みも関係ない。これまであまり選択肢に入らなかった既存ファンドの活性化につながる効果もあるわけだ。

インタビューシーン

「例えば、外債型ファンドしか持たれていないお客さまに株式型ファンドを提案することは、投資理論として間違っていないにしても、どこか感覚的なところがありました。しかし、F-naviを使えば理論とデータに裏打ちされた商品群が自動的にリストアップされ、組み合わせの試算結果も可視化してご提案できるので、販売現場も自信をもっておすすめできるわけです」(平川氏)。福岡銀行がF-naviを本格的に使用し始めたのは2014年7月からだが、すでにこの銘柄選択機能を活用した成功事例が少なからず生まれているという。

03約定までを一気通貫で実現させ事務効率の大幅アップに成功

また、F-navi の導入は新たなCRMシステムとも相まって事務フローを根本的に変え、効率は大幅にアップした。これまで紙ベースで行われていたことがほとんどタブレット上で行えるようになり、約定ですらボタン1つでできるというから驚きだ。顧客管理からフォロー、提案、約定、コンプライアンスチェックまでを一気通貫で実現できる、「おそらく現時点では日本で最も先進的な仕組み」だと内田氏も強調する。

インタビューシーン

つまりF-naviは単独のツールではなく、CRMなど他のシステムと連携しながら預かり資産営業事務フローの一部を担っているわけだ。そうした拡張性も、ASSET DIRECTION®が選択された大きな理由の1つ。FFGでは窓口であれ渉外であれ、今後はすべてこの仕組みに統一させていくという。

まさにF-navi はFFGとMABとの二人三脚で生まれたツールであり、それが実現できたのも、MABが「単にツールを入れたら終わりではなく、その後の関係こそが重要だと考えてくれていたから」だと平川氏は話す。渡辺氏も、「時には無理なことを申し上げたかもしれませんが、いつも笑顔で対応してくれて、本当にありがたかったですね」と振り返る。むろんMABにとっても、地銀トップ行のニーズを取り込めたのは大きなメリットであり、今後はF-naviをベースとしたパッケージを、新たに「ASSET DIRECTION FORESIGHT」として、従来のシリーズに追加して広く展開していく予定だという。

もっとも、F-naviはまだ完成形というわけではない。現在はどちらかといえば既存のお客さまを対象としたツールという位置づけのため、新規顧客の開拓にも活用できるよう、さらなる進化も検討されているという。平川氏は、「地元九州を投資先進地域にしていきたい」と意気込むが、「F-navi/ASSET DIRECTION FORESIGHT」には、それを夢で終わらせないだけの可能性が秘められているのは間違いない。

※金融情報誌『Ma-Do』(Vol.36)の記事に加筆のうえ掲載しています。
※所属・役職は上記取材日時点のものです。